2026.10.28サイバーセキュリティ関連の中小型株が値下がり

2026年10月28日 値下がり率上位10銘柄

10月28日の値下がり率上位10銘柄のうち6銘柄は、10月に入って急騰していたサイバーセキュリティ関連の中小型株でした。残る4銘柄は、決算後の材料出尽くし(トーメンデバイス、テセック)と、短期資金の逃げ足(ジィ・シィ企画、ウインテスト)による下落です。

当日の相場:指数は高いのに、個別株は売られた日

日経平均は大幅続伸し、取引開始直後に64,000円の節目を上回りました。一方で東証プライムは値下がり銘柄が圧倒的に多く、TOPIXは下落して安値引けとなっています。キオクシアなどAI関連の大型株に資金が集中し、それ以外の銘柄からは資金が抜けた形です。

東証全体の値下がり銘柄数は2,505に達しました。グロース市場指数は3日続伸したものの、イベントを控えて上値は重い展開でした。

セキュリティ株の背景

9月から10月にかけて、企業や自治体を狙った不正アクセスによる情報漏えいが相次ぎました。GMOの「お名前.com デスクトップクラウド」への攻撃、メール配信サービス「Cuenote FC」の延べ約5,163万件の漏えいなどが代表例です。これを受けて、個人投資家を中心に中小型のセキュリティ関連株を物色する動きが10月上旬から続いていました。

28日はその流れが逆回転し、上位10銘柄以外でもサイバーセキュリティクラウド、ZenmuTech、カウリス、ブロードバンドセキュリティなどが軒並み売られています。テーマ株の「宴の後」が、この日のランキングの主役でした。

アナリストの視点: 情報漏えい事案の増加は、セキュリティ投資を中長期で押し上げる本物の追い風です。ただし、それが各社の売上・利益に表れるには数四半期かかります。株価は業績の何年分もの期待を数日で織り込んでしまいました。

ディーラーの視点: 信用買いで一気に吊り上がった銘柄は、信用規制や一日の失速をきっかけに投げ売りが連鎖します。テーマ全体で同じ日に崩れたのは、同じ資金が同じ銘柄群を回していた証拠です。

値下がり率上位10銘柄(10月28日終値)

順位 銘柄(コード) 市場 終値(円) 下落率 年間配当予想(円) 配当利回り 配当性向(予想) 主な下落要因
1 ジィ・シィ企画(4073) グロース 789 -23.40% 0 0% — 年初来高値更新後の急反落
2 GMOプライム・ストラテジー(5250) スタンダード 1,705 -22.68% 22 1.29% 約152% 急騰の反動、親会社の不正アクセス問題
3 トーメンデバイス(2737) プライム 25,450 -21.57% 1,640 6.44% 約37% 中間決算で通期上方修正なし(S安)
4 テセック(6337) スタンダード 2,787 -18.51% 100 3.59% 約49% 好決算も通期据え置きで出尽くし
5 セキュアヴェイル(3042) スタンダード 1,389 -18.44% 3 0.22% 約24% 信用規制の臨時措置
6 TWOSTONE&Sons(7352) グロース 375 -17.58% 1(前期予想) 0.27% 約6%(試算) セキュリティ・AIテーマの反落
7 ソーシャルワイヤー(3929) グロース 383 -17.28% 0 0% — テーマ反落(S安)
8 サイバートラスト(4498) グロース 2,447 -16.97% 14 0.57% 約18% テーマ反落(S安)
9 ウインテスト(6721) スタンダード 134 -16.77% 0 0% — 仕手化した急騰の巻き戻し
10 アクリート(4395) グロース 865 -16.43% 10 1.16% 約18% セキュリティ・テーマの反落

配当利回りは28日終値と会社予想配当から算出しました。配当性向は会社予想の1株配当÷予想1株利益です。TWOSTONE&Sonsの配当性向は、27年8月期の会社予想最終利益と発行済株数から試算した参考値です。

第1位 ジィ・シィ企画(4073)-23.40%

下げた理由: 28日は朝方に1,206円まで買われて年初来高値を更新した後、終値789円まで売り崩されました。高値から終値までの下落は約35%に及びます。23日のストップ高から続いた短期資金の買いが、高値更新を合図に一斉に利益確定へ転じた形です。

今後の展望: 本業はクレジットカード等のキャッシュレス決済システムの開発・保守です。会社は26年6月期に売上高30%増と黒字化を見込み、7月には4.63億円の端末リプレイス案件も受注しました。ただ自己資本比率は17.8%と薄く、財務改善が課題です。11月中旬の第1四半期決算が次の試金石になります。

配当: 無配(配当利回り0%、配当性向—)。

アナリストの視点: 時価総額20億円前後の小型株で、受注の積み上がりは評価できます。ただし28日の値動きは業績と無関係な需給によるもので、ファンダメンタルズで説明できる水準を一時的に大きく超えていました。

ディーラーの視点: 寄り付き後の高値更新から大陰線、という典型的な天井形状です。上ヒゲの価格帯には大量のしこり玉が残りました。しばらくは戻り売りに押されやすいでしょう。

第2位 GMOプライム・ストラテジー(5250)-22.68%

下げた理由: 20日の1,095円から、22日・23日の連続ストップ高を経て27日には2,205円まで約2倍に急騰していました。28日はその反動売りに加え、親会社GMOインターネットグループへの不正アクセス問題で、攻撃者が27日正午から顧客情報の公開を始めたことも重荷になりました。

今後の展望: WordPress高速実行環境「KUSANAGI」の開発会社で、2025年12月のTOBでGMOグループ入り(62.35%取得)しました。26年12月期の経常利益予想は7,200万円(前期比53.8%減)と、業績は伸び悩んでいます。

配当: 年22円予想(利回り1.29%)。予想1株利益14.5円に対し配当性向は約152%で、利益を上回る配当です。

アナリストの視点: 28日終値でも予想PERは約118倍と、業績面からは説明が難しい水準です。利益を超える配当は内部留保の取り崩しで、持続性には疑問符が付きます。

ディーラーの視点: 浮動株が少なく、少額の売買で値が飛ぶ銘柄です。親会社の情報公開が「毎日正午」と予告されている間は、ニュースのたびに売りが出やすいと見ます。

第3位 トーメンデバイス(2737)-21.57%

下げた理由: 28日午後1時ごろに9月中間期決算を発表しましたが、通期予想の上方修正がなかったことで失望売りが膨らみました。朝方は34,700円まで上昇していましたが、発表後にマイナスへ転じ、ストップ安の25,450円で引けています。

今後の展望: サムスン電子製の半導体メモリーを扱う豊田通商系の商社です。AI向けHBMへの生産シフトで汎用メモリーが逼迫し、価格高騰の恩恵を受けています。会社は27年3月期に売上高1.4兆円(前期比2.2倍)、最終利益300億円(同3.0倍)を見込みます。株価は1年前の6,980円から9月28日に44,200円まで上昇しており、市場は上方修正を「当然」と見ていました。

配当: 年1,640円予想(利回り6.44%)、配当性向約37%。

アナリストの視点: 予想PERは約5.8倍、利回りは6%台と、数字上は割安です。焦点はメモリー価格の高騰がいつまで続くかで、市況がピークアウトすれば利益は大きく振れます。自己資本比率17.2%と借入依存が高い点にも注意が必要です。

ディーラーの視点: 「好業績なのに上方修正なし」で、期待で買っていた投資家が一斉に降りました。ストップ安で売り残りがあれば、29日も寄り付きは安く始まる可能性があります。

第4位 テセック(6337)-18.51%

下げた理由: 27日発表の中間決算は、経常利益8.61億円と市場予想(8億円)を7.6%上回る好内容でした。しかし通期経常予想13億円は据え置かれ、市場予想(14.5億円)を約10%下回りました。下期の営業利益は上期を下回る計算となり、「材料出尽くし」と受け止められました。

今後の展望: 半導体用ハンドラ(選別装置)とパワー半導体向けテスタが主力です。受注高は前年同期比151.3%増、ハンドラ受注は2000年度以来の高水準で、受注残は43.7億円に積み上がっています。会社計画は保守的に見え、下期の上振れ余地があります。

配当: 年100円予想(利回り3.59%)、配当性向約49%。今期から中間配当(50円)を導入しました。

アナリストの視点: 終値2,787円はPER約13.6倍、PBR約1.0倍で、自己資本比率約89%の財務の厚さを考えると割安感があります。受注残の厚さから、来期への業績の継続性も期待できます。

ディーラーの視点: 決算を手掛かりに買い上がっていた短期資金の売りで、下げ幅は内容に比べて過大です。配当利回り3.5%超は下値の支えになり、反発の候補として監視したい銘柄です。

第5位 セキュアヴェイル(3042)-18.44%

下げた理由: 東京証券取引所が信用取引の臨時措置(委託保証金率の引き上げ)を実施し、信用買いの手仕舞いを誘いました。同社は27日にサイバーセキュリティ関連の「中心格」として300円高の1,703円まで買われており、7月の300円割れから約6倍に上昇していました。

今後の展望: ネットワーク監視の「NetStare」、ログ分析の「LogStare」を手がけます。第1四半期は営業赤字(5,200万円の損失)で、27年3月期の最終利益予想は9,500万円にとどまります。

配当: 年3円予想(利回り0.22%)、配当性向約24%。

アナリストの視点: 予想PERは100倍を超え、テーマ性だけで買われた水準です。セキュリティ需要の増加は事実でも、同社の業績規模ではこの株価を正当化するのは困難です。

ディーラーの視点: 信用規制は「過熱の公式認定」です。追加の規制(現金比率の引き上げ等)が入ると、もう一段の投げ売りが出るパターンが多く見られます。

第6位 TWOSTONE&Sons(7352)-17.58%

下げた理由: 10月中旬にサイバーセキュリティ分野への参入(Layer8、サイバーセキュリティクラウドとの提携)と強気の今期計画で連日ストップ高となり、9月末の300円台前半から500円台まで上昇していました。28日はセキュリティ・生成AIテーマ全体の売りに巻き込まれました。

今後の展望: フリーランスITエンジニアのマッチング「Midworks」が主力です。27年8月期は営業利益15.3億円(前期比89%増)を計画しています。一方、10月6日には前期の経常利益予想を13.2億円から8.4億円へ36%下方修正しており、計画の達成力には慎重な見方も必要です。

配当: 前期(26年8月期)予想は年1円。今期の配当予想は確認できませんでした。同水準なら利回り0.27%、配当性向は約6%(試算)です。

アナリストの視点: IT人材不足は構造的な追い風で、今期計画どおりなら予想PERは20倍台前半と過熱感は限定的です。ただ前期に大幅な下方修正を出したばかりで、計画の信頼性回復が先決です。

ディーラーの視点: 本業はセキュリティ企業ではなく、提携ニュースでテーマ株として買われた銘柄です。テーマ資金が抜けると、元の300円台がまず意識されます。

第7位 ソーシャルワイヤー(3929)-17.28%(ストップ安)

下げた理由: 23日に、AIで企業サイトの脆弱性を点検する「クリップマスター・セキュリティ」の提供開始を発表してストップ高となっていました。28日は前場からストップ安で張り付き、テーマ株の中でも売りが最も厳しい銘柄の一つでした。

今後の展望: プレスリリース配信「@Press」と報道・SNS情報の収集分析「Clip Master」が主力です。インフルエンサーPRが伸び、27年3月期の経常利益は4.0億円(前期比96%増)を計画しています。セキュリティ事業はまだ立ち上げ段階です。

配当: 無配(27年3月期も無配予想)。株主優待(デジタルギフト)があります。

アナリストの視点: 本業の利益成長は堅調で、セキュリティは付加価値の一つにすぎません。業績評価はPR事業の伸びで見るべきで、セキュリティ新サービスの収益貢献は数年単位で見る必要があります。

ディーラーの視点: ストップ安で引けた銘柄は売り残りを抱えて翌日を迎えます。29日に寄り付くかどうか、寄った後に下げ止まるかが短期の分岐点です。

第8位 サイバートラスト(4498)-16.97%(ストップ安)

下げた理由: 21日に耐量子暗号を見据えた鍵管理サービスの提供開始でストップ高となり、23日にも年初来高値を更新していました。28日はセキュリティ株の一斉安の中でストップ安となりました。

今後の展望: 電子認証局(電子証明書)とLinux・IoT向けセキュリティが主力です。26年3月期は売上高83.6億円(12.3%増)、営業利益16.5億円(16.0%増)、第1四半期も営業利益31.4%増と、10銘柄の中で業績の裏付けが最もしっかりした会社の一つです。

配当: 年14円予想(利回り0.57%)、配当性向は約18%(前期実績19.6%)。2期連続増配です。

アナリストの視点: 耐量子暗号や電子証明書の需要は政府・金融を中心に中長期で拡大が見込めます。実績PERは約40倍と高めですが、成長が続けば正当化しうる水準で、テーマ株の中では「本物」に近い銘柄です。

ディーラーの視点: 業績の裏付けがある銘柄ほど、テーマ一巡後の押し目には中長期資金の買いが入りやすいものです。ストップ安の翌日以降に出来高を伴って下げ止まるかを確認したいところです。

第9位 ウインテスト(6721)-16.77%

下げた理由: 7月に80円前後だった株価が、10月15日の「海外大手半導体企業とのNDA締結」、21日の「自律走行搬送ロボット販売事業への参入」を材料に一時240円台まで急騰しました。28日はその巻き戻しが続き、134円で引けています。

今後の展望: イメージセンサーやディスプレイドライバIC向けの半導体検査装置メーカーです。26年12月期中間期は売上高1.75億円、営業損失3.93億円でした。通期では売上高16.6億円・営業黒字を計画していますが、下期だけで売上高15億円近くが必要で、達成のハードルは高いと言わざるを得ません。

配当: 無配(継続して無配)。

アナリストの視点: 継続的な赤字で自己資本は3.65億円と小さく、今後の資金調達(増資)による希薄化リスクを意識すべきです。NDA締結は商談の入り口で、受注の確度は未知数です。

ディーラーの視点: 典型的な低位株の仕手化です。信用買い残が大きく膨らんでおり、整理が進むまでは戻りが鈍いでしょう。短期売買の対象であり、腰を据えた投資の対象ではありません。

第10位 アクリート(4395)-16.43%

下げた理由: SMS(ショートメッセージ)による本人認証の需要拡大が意識され、情報セキュリティ関連として21日にストップ高となるなど急伸していました。28日はテーマ全体の利益確定売りに押されました。

今後の展望: 企業向けSMS配信代行(認証用途が中心)が主力で、次世代暗号(PQC)ソリューションも手がけます。26年12月期は1株利益56円を計画する一方、第1四半期は営業利益24%減と出足は鈍めでした。

配当: 年10円予想(利回り1.16%)、配当性向約18%。

アナリストの視点: 終値865円で予想PERは約15倍と、今回の10銘柄の中では割高感が小さい部類です。不正ログイン対策で二要素認証の普及が進めば、SMS認証は恩恵を受けます。

ディーラーの視点: 急騰前の700円前後が下値の目安になります。テーマの熱が冷めた後、業績が計画どおりに進めば、見直し買いが入る余地は残っています。

まとめ:逆張りで見るなら「業績の裏付け」と「配当」で選別を

今回の10銘柄は、性格の違う3つのグループに分かれます。

  • 決算で売られた実力株: テセック、トーメンデバイス。好業績は確認済みで、配当利回りも3〜6%台。下げの理由が「期待に届かなかった」ことなので、逆張りの検討対象になりやすいグループです。
  • 業績の裏付けがあるテーマ株: サイバートラスト、アクリート。テーマの熱が冷めた後、業績が計画どおりなら見直される余地があります。
  • 需給だけで動いたテーマ株・仕手株: ジィ・シィ企画、GMOプライム・ストラテジー、セキュアヴェイル、TWOSTONE&Sons、ソーシャルワイヤー、ウインテスト。下げ止まりを確認するまでは手を出しにくいグループです。

セキュリティ投資の拡大という大きな流れ自体は変わっていません。ただ、短期間に何倍にもなった小型株は、テーマが続いても株価は先に天井を付けることが多いものです。

ご注意: 本記事のアナリスト・ディーラーの視点は、公開情報をもとに一般的な分析の観点を整理したもので、特定の証券会社や人物の見解ではありません。投資の勧誘や推奨を目的としたものではなく、売買の判断はご自身の責任でお願いします。株価・配当予想は2026年10月28日時点の公表情報に基づきます。

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