2026年10月9日 下落率上位10銘柄
本日のまとめ
10月9日の東証は、前週から続いていたサイバーセキュリティ関連株の急騰相場が一斉に巻き戻された一日でした。下落率上位10銘柄のうち6銘柄(GRCS、ZenmuTech、ハンモック、アズジェント、テリロジーHD、および上位圏のフーバーブレイン、サイバーソリューションズ、エルテスなど)がセキュリティ関連です。
背景として、10月1日に「能動的サイバー防御」関連法が施行され、さらに大手企業の個人情報流出が相次いだことでテーマ買いが過熱していました。ZenmuTechは約1か月で6割近く上昇、10月6日・8日にはカウリスやサイバーソリューションズがストップ高に買われるなど、短期資金が集中していた状況です。9日はその反動で、信用買いの手仕舞いと利益確定売りが同時に出た格好です。
一方で、同じセキュリティ関連でもサイバーセキュリティクラウドは9日に10%超上昇しており、「テーマ全体の終わり」ではなく「業績の裏付けが薄い銘柄から資金が抜け、実績のある銘柄へ移る」選別が始まったと見るのが妥当です。
| 順位 | コード | 銘柄 | 市場 | 終値 | 下落率 | 予想配当 | 配当利回り | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 9250 | GRCS | 東証G | 1,280円 | -19.85% | 無配 | 0.00% | — |
| 2 | 338A | ZenmuTech | 東証G | 4,755円 | -16.43% | 無配 | 0.00% | — |
| 3 | 173A | ハンモック | 東証G | 1,820円 | -15.82% | 65円 | 3.57% | 約47% |
| 4 | 4073 | ジィ・シィ企画 | 東証G | 663円 | -14.01% | 無配 | 0.00% | — |
| 5 | 4288 | アズジェント | 東証S | 538円 | -12.38% | 無配 | 0.00% | — |
| 6 | 476A | 辻・本郷ITコンサルティング | 東証S | 2,197円 | -11.41% | 無配 | 0.00% | — |
| 7 | 3907 | シリコンスタジオ | 東証S | 1,545円 | -11.21% | 無配 | 0.00% | —(前期13.4%) |
| 8 | 5133 | テリロジーHD | 東証S | 353円 | -10.63% | 5円 | 1.42% | 19.9% |
| 9 | 8918 | ランド | 東証S | 10円 | -9.09% | 無配 | 0.00% | — |
| 10 | 6721 | ウインテスト | 東証S | 71円 | -8.97% | 無配 | 0.00% | — |
※対象は東証上場銘柄。全市場ランキングでは名証ネクストのVLCセキュリティ(2467、-15.38%)が4位に入っていますが、本ブログの集計対象外のため除外し、11位のウインテストを繰り上げています。 ※配当利回りは10月9日終値と会社予想配当から算出。ハンモックの配当性向は会社予想EPSから当ブログが試算した参考値です。
第1位 GRCS(9250)-19.85%
下落理由 GRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)とセキュリティのコンサルティング・ソフトを手がける同社は、サイバー関連テーマの一角として直近で買われていました。9日はテーマ全体の巻き戻しに加え、時価総額十数億円規模で板が薄いことから売りが売りを呼び、上位銘柄で最大の下げとなりました。
アナリストの視点 最大の論点は財務です。2025年11月期は純損失5億円超を計上し、期末で純資産がマイナス(債務超過)となり、上場維持基準(純資産基準)の改善期間に入っています。2026年1月にはフィックスターズとの資本業務提携と第三者割当増資を実施しましたが、今期会社予想(経常利益1億円)に対し中間期は経常赤字6,000万円と、下期偏重の計画です。テーマ性より「下期に計画どおり黒字を積めるか」「純資産のプラス転換」が株価の本質的な決定要因です。
ディーラーの視点 テーマ相場で急伸した小型・低流動性銘柄の典型的な「行って来い」です。出来高を伴う大陰線は短期筋の撤退サインで、目先は戻り売りが出やすい形。自律反発があっても、急騰前の水準(9月中旬は1,000円前後)がひとつの目安になります。
配当:無配(2026年11月期も無配予想)。債務超過解消が優先のため、当面の復配は期待しにくい状況です。
第2位 ZenmuTech(338A)-16.43%
下落理由 秘密分散技術を使った情報漏洩対策を手がける、今回のサイバー相場の主役銘柄です。10月7日に年初来高値5,690円をつけ、8日も13.8%高と連日急伸していましたが、9日は一転して大量の利益確定売りに押されました。出来高は300万株超に膨らんでいます。
アナリストの視点 株価と業績の乖離が大きい銘柄です。2026年12月期上期は売上高3.05億円(前年同期比0.3%増)とほぼ横ばいで、営業損失は前年の0.24億円から0.99億円へ拡大しています。技術の独自性は評価できるものの、現時点の時価総額は業績ではなく期待で説明されています。官公庁・大企業向けの大型受注など、数字で裏付けられる材料が出るかが今後の焦点です。
ディーラーの視点 連続ストップ高後の初押しとしては想定内の下げ幅ですが、高値圏での大商いを伴う陰線は「天井の可能性」を意識させます。値動きの大きさから短期資金の回転売買が続く一方、信用買い残の整理が進むまでは上値が重くなりがちです。
配当:無配(赤字継続)。
第3位 ハンモック(173A)-15.82%
下落理由 IT資産管理・情報漏洩対策ソフト「AssetView」を主力とするため、サイバー関連テーマの一角として買われていました。9日はテーマ一括売りに巻き込まれた形で、個別の悪材料は確認されていません。
アナリストの視点 今回の10銘柄の中で、最もファンダメンタルズがしっかりした銘柄です。2027年3月期第1四半期は経常利益1.25億円(前年同期比34.4%増)と好調で、通期予想は8.99億円(3.7%増)。8月には配当方針を変更し、中間配当を新設して年間配当予想を45円から65円へ増額しました。予想PERは10倍台前半と、テーマ株の中では割高感が乏しい水準です。
ディーラーの視点 テーマの連れ安で業績の良い銘柄まで売られた場面は、逆張りの検討対象になりやすい局面です。ただし小型株でもあり、テーマ資金の逆回転が続く間は下値を探る展開もあり得ます。急騰前の1,600円前後が下値の目安として意識されます。
配当:年間65円予想(中間20円+期末45円)、利回り3.57%。配当性向は会社予想EPSベースで約47%(当ブログ試算)。
第4位 ジィ・シィ企画(4073)-14.01%
下落理由 キャッシュレス決済の端末・システムを手がける同社は、9月下旬以降に急伸し、9月29日に52週高値875円、10月5日にも14%高と乱高下していました。8日に14%安、9日も14%安と2日連続の大幅安です。9日について明確な個別材料は確認できず、短期資金の離脱と見られます。
アナリストの視点 2026年6月期第3四半期累計は売上高14.9億円(前年同期比16.8%増)と増収で、損失幅も縮小し黒字化を目指す段階でした。ただし自己資本比率は2割を下回る水準で、財務の厚みはまだ十分ではありません。新年度の業績計画で黒字の定着を示せるかがポイントです。
ディーラーの視点 時価総額20億円前後の超小型株で、値幅取りの短期資金が出入りしやすい銘柄です。2日続けて14%安と、上昇分の大半を吐き出しつつあり、急騰前の500円台まで戻るリスクも念頭に置くべきでしょう。
配当:無配。
第5位 アズジェント(4288)-12.38%
下落理由 チェック・ポイント社製ファイアウォールなど海外セキュリティ製品の輸入販売を手がけ、今回のサイバー相場で商いを伴って急騰していました。9日はテーマ全体の調整で反落しています。
アナリストの視点 前期(2026年3月期)は黒字転換を果たしたものの、今期の会社予想は経常利益5,000万円(前期比63%減)と減益計画で、第1四半期は経常赤字5,300万円でした。予想EPSは13円程度で、500円台の株価は予想PER40倍前後に相当します。「政策テーマの恩恵」が受注・利益として表れるまで時間がかかる点に注意が必要です。
ディーラーの視点 9月末は430円台だった株価が短期間で600円台まで上昇しており、急騰分の調整はまだ途中という見方もできます。売買代金が細るとさらに値幅が出やすい点に注意。
配当:無配(6期連続無配)。
第6位 辻・本郷ITコンサルティング(476A)-11.41%
下落理由 10月1日に「CSアカウンティングの子会社化」を発表してストップ高となり、9月末の1,700円前後から10月7日には2,980円まで急騰していました。8日に16.78%安、9日も11.41%安と、材料出尽くしの利益確定売りが続いています。
アナリストの視点 税理士法人グループのIT部門という独自のポジションと伊藤忠商事の資本参加が特徴です。2026年9月期の会社予想は売上高29億円(前期比37%増)、経常利益4.28億円(32%増)と高成長で、M&Aによる会計・経理代行領域の強化は中長期で合理的です。現在の株価は予想PER14倍程度で、急騰前の10倍前後からは評価が一段上がった水準。11月の本決算と来期計画で、買収効果が数字に織り込まれるかを見極めたいところです。
ディーラーの視点 普段の出来高は1日数千株と極めて薄く、材料で一気に跳ねた後は反動も大きくなりがちです。急騰の半値押し(2,300円台)を割り込んだことで、短期的には上昇前の水準を試す可能性もあります。
配当:無配。
第7位 シリコンスタジオ(3907)-11.21%
下落理由 ゲーム向け3DCGミドルウェアの老舗で、9月に「官公庁事業推進室」の新設を発表し、防衛分野のデジタルツイン受託実績が材料視されてストップ高。その後も防衛・官公庁関連として短期間で株価が2倍超に上昇していたため、9日は利益確定売りが優勢となりました。
アナリストの視点 7月に2026年11月期の業績予想を下方修正し、営業損益は黒字1.22億円の予想から2億円の赤字へ転落、期末配当も10円から無配に修正しています。3DCG映像制作案件の損失が主因です。防衛・公共分野への展開は中長期の成長余地として評価できる一方、足元の業績は厳しく、近く発表される第3四半期決算で損失の追加がないかを確認する必要があります。
ディーラーの視点 決算発表を控えて、ポジションを軽くする動きが出やすいタイミングです。7月にも「材料での急騰→反落」を繰り返しており、値動きの荒さを前提にした短期売買の対象と割り切る投資家が多い銘柄です。
配当:今期は無配予想(前期は10円、配当性向13.4%)。
第8位 テリロジーホールディングス(5133)-10.63%
下落理由 ネットワーク・セキュリティ製品の販売や脅威インテリジェンスを手がけ、子会社は官公庁向けセキュリティに実績があります。サイバー関連の一角として買われていた反動で、9日はテーマ全体の調整に連れ安しました。
アナリストの視点 2027年3月期の会社予想は経常利益7.15億円(前期比9.0%増)と堅実な増益計画で、高千穂交易やサクサとの資本業務提携など事業基盤の拡大も進めています。予想PERは10倍台前半で、テーマ株の中では比較的割安です。能動的サイバー防御の制度運用が進めば、官公庁向けの実需が業績に結びつきやすい銘柄と言えます。
ディーラーの視点 株価300円台の低位株で個人投資家の売買比率が高く、テーマの過熱・冷却に連動しやすい傾向があります。9月の300円前後が下値の支えとして意識されそうです。
配当:年間5円予想(期末一括)、利回り1.42%、配当性向19.9%(会社予想ベース)。
第9位 ランド(8918)-9.09%
下落理由 株価10円の超低位株で、呼値の最小単位が1円のため、1円下がるだけで9%超の下落となります。9日も1円安の10円で、本日固有の悪材料というより、値幅の仕組み上ランキングに頻繁に顔を出す銘柄です。
アナリストの視点 不動産開発を手がける同社は、発行済株式数が非常に多く、1株当たりの価値が小さいため、ファンダメンタルズ分析による株価評価がなじみにくい銘柄です。投資判断の材料とするには、株式併合などの資本政策の動向を確認する必要があります。
ディーラーの視点 1円刻みの値動きと毎日の大量の出来高から、デイトレードの回転売買の対象です。下落率の数字だけを見て「大きく売られた」と判断しないことが重要です。
配当:無配。
第10位 ウインテスト(6721)-8.97%
下落理由 イメージセンサーやディスプレー向けの半導体検査装置を手がける低位株です。株価70円台で、7円安が9%近い下落率に相当します。9日について個別材料は確認されておらず、低位株・半導体関連への売りが波及したと見られます。
アナリストの視点 2026年12月期は売上高16.6億円、営業黒字5,600万円という会社計画ですが、上期は売上高1.75億円・営業赤字3.93億円と、計画達成には下期に大幅な売上計上が必要です。長年赤字が続いており、計画の実現性には慎重な見方が妥当です。
ディーラーの視点 52週安値(69円)に近づいており、心理的な節目の70円を維持できるかが目先の焦点です。割り込むと見切り売りが出やすい形です。
配当:無配(赤字継続)。
逆張り投資家へのヒント
今回の下落は、業績よりも需給で動いた銘柄がほとんどです。逆張りを検討する場合は、次の2つを分けて考えるのが基本です。
業績の裏付けがある銘柄:ハンモック(増益・増配、配当利回り3%台)、テリロジーHD(増益計画、PER10倍台)。テーマの連れ安で売られた分は、時間をかけて修正される余地があります。
期待先行で急騰していた銘柄:GRCS、ZenmuTech、ジィ・シィ企画、アズジェント。業績や財務の裏付けが乏しく、急騰前の水準まで戻るリスクを想定しておくべきです。
サイバーセキュリティは政策と実需の両面で中長期の成長分野であることに変わりはありません。テーマが崩れたのではなく、短期資金の過熱が冷めた局面と捉え、決算で数字が伴う銘柄を選別していく姿勢が大切です。
※本記事は公開情報をもとに、証券会社のアナリストとディーラーの一般的な分析視点から解説したもので、特定の人物の発言ではありません。特定銘柄の売買を推奨するものではなく、投資判断はご自身の責任でお願いいたします。株価・配当は2026年10月9日時点の情報です。
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